ブラタモリ商売上手な出雲大社の歴史と大社駅跡 ……2015.8.22

2015/08/22

ブラタモリ２０１５年８月２２日放送（出雲）の内容解説です。
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来週のブラタモリは軽井沢です。

ブラタモリ商売上手な出雲大社の歴史と大社駅跡 ……2015.8.22

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出雲の基礎知識

出雲大社
・縁結びの神、福の神として名高い「出雲大社」は、「古事記」（最古の歴史書）にその創建が記されている。
・明治初期までは「杵築大社」と呼ばれていた。
・主祭神は大国主大神（おおくにぬしのおおかみ）。

その他
・大社駅の駅舎は国の重要文化財。

ブラタモリ出雲【１】出雲大社の歴史と「杵築（きづき）大社」

１　「出雲はなぜ日本有数の観光地になったのか」。旧大社駅から大鳥居をくぐり下り坂を歩き「祓橋」を渡り境内へ。下り坂は昔の砂丘だった地形の名残だと思われます。出雲大社がいまの賑わいになったのはその歴史からは意外に最近で、約２５０年前（江戸時代中期）のことです。

２　出雲大社には１０月に全国の神が集まると言われています。

ポイント解説　神無月論争

出雲大社に神々が集まる１０月は全国では「神無月」と呼ばれます。一方出雲の国では１０月を「神在月」と呼ぶのはご存知でしたか？というのが一般的な豆知識です。しかしもう少し詳しく調べると１０月に出雲の国に神が集まることは出雲大社がそう主張しているだけだという意見も存在します。そもそも漢字の「無」は「の」と読ませることもあり、神無（の）月＝神の月であるという説も存在します。梅雨が水無月（＝水の月）であることとの整合性も保てます。

１０月には全国各地で祭りが多く、神がいないというのは少々不自然。神無月伝説が全国に浸透しているのは出雲大社の「営業力」に負うところが大きいのかも知れません。

４　二礼四拍手一礼が出雲大社の作法。一度は明治政府の方針で全国統一の作法（二拝二拍手一拝）に合わせましたが、昭和期に自由化され元来の作法に戻しました。

５　２０００年の春に古い柱の跡が発見されています。直径約1.35ｍもの巨木を３本組にした鎌倉時代の巨大柱です。出雲大社は古来は高さ４８ｍ（１５階建てのビルに相当）の建築だったという説もあります。

６　出雲大社は現在遷宮の途中。現在の本殿は２４０年前に建てられたもので遷宮は６０年ぶりです。出雲大社の遷宮は一度場所をずらし、リフレッシュして戻す方法が取られます。

ポイント解説　遷宮の狙い

遷宮とは、本殿などを近くの土地にそのまま移転することです。移転後そのまま次の遷宮までその場所に建てておく場合と、修繕して元の場所に戻す場合があります。伊勢神宮は前者、出雲大社は後者になります。

遷宮の狙いについては諸説あります。

・建物を修繕し維持していくため
・建築技術を継承していくため
・清浄を保つため
・神様が鎮座された原点を再現するため
・代々伝わる伝統的精神文化の蘇りを図るため

どれも納得できる理由ですが、原点には「当初のメッセージを来世に残すにはむしろ壊れやすいものがよい」という考え方があります。

例えば政治家が自身の偉業を後世に残すためにはどのような手段を選ぶでしょうか？多くの人が非常に頑丈な銅像を作ったり文字を刻み込んだ石碑を思い浮かべます。あるいはビルを建てるかもしれません。しかし多くの歌碑が朽ち果てて読めなくなるように、壊れにくいものは壊れたらゼロになってしまうリスクがあります。

一方で木造の壊れやすい建物にメッセージを残したり、形の無い神話や物語にメッセージを残す方法。こちらは完全なコピーでなはなく改編のリスクを内包しますが、一方で先々まで残る可能性を秘めています。例えば松下幸之助の多くの言葉はこの壊れやすいタイプに属します。出雲大社の遷都の本質は、後世までメッセージを伝えていく最善の手段だということにあります。

７　本殿は通常非公開。天井には「八雲の図」が描かれています。しかし実際に雲の数を数えるとあえて完成を避け七つの雲しか描かれてていません。

ポイント解説　あえて完成を避ける

出典：http://rekishitabi.blog.fc2.com/blog-entry-265.html

松江城の天主もわざとまっすぐな直線に屋根を配置せず、未完成の部分を残しています。ブラタモリ松江の回では、完成（頂点）の後には転落しかないためゲンをかついだと解説されました。

→　ブラタモリ国宝松江城の歴史と宍道湖の秘密 ……2015.8.1

８　江戸時代の古地図には旧名の「杵築（きづき）大社」と記されています。大勢の神々が築いたという意味です。

ブラタモリ出雲【２】出雲大社の集客の工夫

１　全国的な知名度が無く訪れる人も格段に少なかった江戸時代中期、御師（神職）が全国を布教してまわり出雲大社の名を広める努力をしました。

出典：楽天（クリックできますがかなりの値段です）

２　出雲大社が祭る神様は大国様（大国主大神）。ご利益（りやく）ある信仰の象徴として大国様を携え御師（神職）が全国で布教を進めました。

３　江戸時代の布教道具が残っているのが現在そば屋の荒木屋。

出典：＠りとはふさん（食べログ）

荒木屋
出雲大社前駅（一畑電鉄）から617m
島根県出雲市大社町杵築東409-2

４　荒木屋には江戸時代の硯石（すずりいし）が保存されています。「蕎麦預」という文字を印字できる硯があります。江戸時代には、出雲大社参詣のおまけとして蕎麦と引き換えができたのです。

５　御師は様々なご利益を全国に持参しましたが、一番好評だったのが「縁結び」。江戸で全国の神々が出雲に集まり縁結びの相談をする絵も広まりました。

藤間家　出典：出雲大社その⑦

６　藤間家（個人宅）を訪ねます。古い「富くじ」が保存してあります。出雲大社修繕に使うことで幕府の許可を得たものです。発売された８日間で現在の価値で２３億円の売り上げとなりました。富くじの抽選日は祭礼の最終日に設定されていました。

ポイント解説　商売上手な出雲大社

・神無月　…　全国の神社を敵に回しかねない神無月と神在月のストーリー。商売は言ったもん勝ち、先に広めたもん勝ちです。

・おまけ（蕎麦預）…　現在では当たり前となったおまけやポイント。しかし江戸時代の感覚では蕎麦を無料で振舞うのは画期的な感覚だったはずです。千葉県の銚子電鉄は1日乗車券に「濡れ煎餅預（あずかり）」のような券を付けています。

出典：地元民に聞いた銚子電鉄観光案内

・縁結び　…　ブラタモリが明らかにしたのは必ずしも「縁結び」ありきではなく、いくつかのご利益のうち人気があったのが縁結びであり、ほかにライバルがいなかったため好評だったということ。商売は無節操ではいけませんが、節操を保ちすぎると失敗するもの。よい塩梅です。ちなみに伊勢神宮などに対し後発組の出雲大社が行った縁結びの売り込みは、現代のビジネス理論ではランチェスター戦略と呼ばれています。

参考：営業マンが読むべき天使の教科書（外部サイト。最後のほうにランチェスター戦略）

・富くじ　…　ギャンブルはあまりにも儲かりすぎるため世界中で国が独占しています。出雲大社はそのうまみを知っており、幕府に交渉したのでしょう。また気になる当選発表を祭礼の最終日に置き参拝客を釘付けにしたのも見事です。日本の競馬でもメインレースは１１Rと後ろから二番目にあります。

ブラタモリ出雲【３】大社駅

出典：出雲大社その⑦

１　東京駅、門司港駅と並ぶ国の需要文化財が大社駅舎。鉄道は廃止となり、駅舎だけが残されています。

２　国鉄大社線は１９１２年に開業し出雲観光の大動脈となりました。繁華街の反対で大社駅は出雲大社から徒歩２０分以上離れた場所に。その後参拝客の便を考え大社駅から出雲大社への太い参道が作られました。しかしクルマの台頭で平成２年に大社線が廃止。観光の機運が落ち込み参拝客は３分の２になってしまいます。

３　観光客の激減でシャッター通りのようになった神門通りは、地元の事業として大改装されました。女性向けの、縁結びにちなんだスイーツ店を数多く誘致したのです。信仰をスピリチュアルと言い換える全国的な流れにも乗り、観光客は年間８００万人に回復しましした。

ポイント解説　出雲大社が破門にした神社